元SMAPメンバーで、オート界でも屈指の人気レーサーの森且行が、11月3日の日本選手権(川口)優勝戦で、4度目のSG優出にして、ついに悲願のSG初制覇を飾った。大粒の涙を流したシーンはワイドショーでも広く放映され、SMAPのメンバーもコメントを出すなど、オートレース界の枠を超えたビッグニュースとなった。
森は1997年6月に選手登録。実に23年4カ月の歳月をかけ、手につかんだ栄冠だった。デビュー後、わずか3年3カ月でSGを勝った鈴木圭一郎に比べて、約20年も遅いSG戴冠で、オートレース史上で最も長いキャリアを経たSGレーサーとなった。
森の真骨頂と言えば抜群のスタート力だろう。2020年の平均スタートタイミングは、11月20日現在、0秒08で、堂々のランキング1位。同じスタート巧者の青山周平や永井大介、佐藤摩弥らが0秒13なのだから、森のスタートの速さが分かるだろう。
これまでG1レースは、2009年の「開設記念グランプリレース(川口)」と2013年の「キューポラ杯(川口)」と2勝しているが、悲願のSGタイトルが加わったことで、ますます円熟味が増していくのは間違いなさそうだ。
2個目のSGタイトル奪取へ虎視眈々
走路温度が上がるとタイヤを滑らせ、成績の上がらない森だが、走路が冷え込めば本領を発揮するのも森。湿走路も巧みに乗りこなす。今年は11月20日現在、10優出で優勝はわずか1回だが、ブチ走路(半乾き)の日本選手権を含め、走路が冷えた状態での好走が目につくだけに、目が離せない存在となる。
その意味でも、本格的な冬に突入するこれからは、森の活躍がますます期待される。11月3日現在の賞金ランキングは、トップの青山周平と約1300万円差の5位だが、優勝賞金3000万円のスーパースター王座決定戦も勝てば、初の賞金王に輝く可能性も残されている。
日本選手権の優勝は、前を走る2車が落車したおかげという声も聞くが、「運も実力のうち」ということを忘れてはならない。森は日本選手権に限らず、普段の開催でも、スタート練習を含めた練習を最後まで続け、ロッカーでもマシンの調整に死力を尽くしている。
23年以上に及ぶ、地道な努力がもたらした日本選手権での奇跡の逆転優勝劇。このSG制覇を境に、森が一気に覚醒しても不思議ではない。年末に地元の川口で開催される「SGスーパースター王座決定戦」が今から楽しみだ。