そもそもフライング方式を採用する競艇では、選手は規定の時間から1秒以内にスタートラインを通過しなければならない。規定の時間より前にスタートラインを通過してしまうと「フライング」、1秒以上遅れて通過すると「出遅れ」で、その選手は欠場(その選手にかかわる舟券は払い戻し)となる。
同一期間(6カ月)内にフライングを1本切ると「30日」の斡旋停止、2本目のフライングを切ると「60日」の斡旋停止となる。つまり同一期間内にフライングを2本切ると、30+60=90日の斡旋停止で、6カ月のうち、約3カ月間、レースに出場できなくなる。
いわゆる自営業者である競艇選手にとって、賞金を稼ぐレースに参加できないことは死活問題。家族の生活費や住宅ローン、その他、定期の出費の予定が狂ってしまう。ゆえに、フライングを1本持っている選手はスタートで慎重になり、2本持っている選手はレースの勝ち負けより、間違っても3本目のフライングを切ることがないよう、守りのレースに専念することになる。
ちなみに昨年、日高逸子が芦屋のオールレディースをF2(フライング2本持ち)で優勝。2005年には田頭実が何とF3(フライング3本持ち)で若松のG1レースを制している。これはファンや選手間でも伝説となっている。仮に同一期間で4本目のフライングを切れば、事実上の「引退勧告」が待っている。
フライングを抱える選手の心理を推測しながら舟券を組み立てるのも、競艇ならではの面白さと言えるだろう。