川口オートの代表選手の1人と言えば、若井友和だろう。廃止された船橋オートからの移籍組である永井大介、中村雅人、池田政和らと異なり、若井は同期の森且行らと同様、生粋の川口オート育ち。現在は川口オートの支部長も務めている。もちろん、選手仲間からの信頼は厚く、指導を惜しまない佐藤摩弥ら、若井を慕う若手は少なくない。
そんな若井はデビュー3年目にG1の「スピード王決定戦(浜松)」を制覇。3年後の2002年には地元川口オートのG1「開設記念グランプリレース」を勝ち、返す刀で2004年の「オートレースグランプリ」でSG初優勝を飾った。
以後は10年ほどグレードレースのタイトルに見放されていたが、2015年にG1レースを2勝。2019年には川口オートの「G1 開設記念グランプリレース」で3度目の優勝を飾り、復活の兆しを見せている。
若井は常々、「悪くても3着までに入るレースを心がけている」と話す。自身も競馬など公営競技のファンであることから、車券を買うファンの気持ちをよく理解しているのだろう。スタートこそ速くないが、常にファンの車券を意識した、執拗な追い上げで、「3着以内」という最低限のノルマ達成へ、全力投球している。
近況不振も、底力は侮れない
2021年2月16日現在、通算勝利は790勝。優勝回数はグレードレース7勝を含めた49Vと、実績を積み重ねている。節目の800勝、50V達成は時間の問題だが、同期の森且行が昨年の日本選手権を制したことも刺激となり、ビッグレース制覇に意欲を燃やしている。
良走路の近180日の戦績は勝率17%、3連対率54%だが、これが湿走路になると、勝率は64%(11戦7勝)と跳ね上がる。走路を問わずに実力を発揮し、そして最後まであきらめない追い上げが、若井の真骨頂と言えるだろう。
直前の伊勢崎オート「G2 レジェンドカップ」は準決勝3着で、惜しくも優勝戦進出を逃したが、同シリーズは5戦して2勝、2着1回、3着2回とすべて車券に絡んでいる。これもファンを意識した若井の心意気を如実に示す走りと言えよう。若井の合言葉は「元気ですか!」。すでにベテランの域に入っている若井だが、若手に負けない元気な走りで、2021年は大きな仕事をしてくれそうな予感が漂っている。